読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

残響を追って

ドーンガード

セラーナは、生き別れてしまった母親であり、ヴォルキハル城から逃げ出す際に星霜の書の一巻を持ち去ったヴァレリカを探したがっているようだ。セラーナによると、ヴァレリカは城の中庭のどこかに居場所の手がかりを残したかもしれないそうだ。城内の吸血鬼たちに気づかれないように、島の奥側にある秘密の入り口から入ることにした。

f:id:pict-it:20170226190001j:plain

 

セラーナは私を呼び止めた。

「ちょっとお話しする時間をもらっていいかしら。」

 

彼女が言うには、必要とされる星霜の書の1冊をもしかしたら、

生き別れの実の母、ヴァレリカが持っているかもしれないと言うのだ。

 

そのヴァレリカの消息は依然として不明で、何の手がかりもないが、

手がかりの手がかりがもしかしたら、ヴォルキハル城の中庭、、、

ハルコンが嫌悪し、探すのをためらう場所であり、

ヴァレリカが手を入れ丹精込めて育てた植物園であり、

そして、セラーナが心当たりのある唯一の場所にあるかもしれない。

調べてみる価値はある。と確信を持っていた。

 

ヴァルキハル城と言うとあの吸血鬼の本拠地だが、

そう簡単に忍び込めるのか?

とやや懐疑的に話を聞いていると、

中庭に通じる秘密の地下水路がありますのよ!

とセラーナはやけに乗り気だ。

 

やはり吸血鬼といえ、母と娘。

生き別れとなり、消息不明だからこそ、探したいのだな。

 

そんな風にも受け取れたが、

言葉には出さず、その案を承諾し、星霜の書を持つヴァレリカの

居処の手がかりの、手がかりのために、まずはヴァルキハル城の

中庭に向かうことにした。

 

ヴァルキハル城の地下は、雑魚が多数うろついていたものの、

手薄だった。これならドーンガードが総力を挙げて不意打ち作戦をすれば

かなりの痛手を与えれるな。そんな感覚すらあった。

 

「古い貯水池ですわ、ここの臭いときたら」

セラーナ嬢が眉をしかめる。

 

確かに、好んできたい居場所ではないな。

 

地下水路を少し進むと、目的地であるヴォルキハル城の中庭についた。

 

「何と言うことですの?この場所全体が死んでいるようですのよ」

セラーナが大きく落胆の声をあげる。

 

確かにそこは、まるで中庭と呼べる代物でない様相だった。

痩せて荒れ果てた土、色のない花壇、壊れるまま放置されたモニュメント

 

「以前は夕食の後、この中庭を散歩したものですわ。とても綺麗な場所でしたのに」

 

おそらく、そうだったのだろう。

だが、見る影も無いとはまさにこのことだ。

 

「? この月時計はどこかおかしいですわ」

不意にセラーナが声をあげる。

 

そこは、中庭の中央、朽ちて壊れた月時計の場所だった。

近寄ってみると、確かに、と言うかどこかおかしいと言う

表現は違うな。

明確に、月時計の月の満ち欠けを示す3箇所のモニュメントが

外れていた。

 

私は、中庭を散策し、(ついでに錬金素材を取りつつ)その

欠けた3箇所のモニュメントパーツを見つけ、そして、元どおりの

場所にはめていった。

 

!?

 

モニュメントが元に戻ると、自動仕掛けが動き、地下への階段が

姿を見せた。

 

「賢明ですは、お母様。とても賢明です。」

セラーナが呟く。

 

「怠慢だな、セラーナ。とても怠慢だよ」

私も反復して思ってみた。正直戦闘では好戦的なセラーナが、

モニュメント探しを一向に手伝わないその姿に、

若干の苛立ちを感じたからだったが、まぁ、

お嬢様の育ちと言うことでよしとしよう。と

自分を納得させた。

 

「近づいていますわ、行きましょう!」

私の思考に気づいてか気づかずか、セラーナが呟く。

 

その地下階段はヴァルキハル城の廃墟の塔へと続いている

ようだった。

 

そこから先は、吸血鬼の城という名に恥じない悪趣味な世界だった。

ケルトンが跋扈し、ガーゴイルが突然襲いかかる不気味な空間。

 

セラーナ嬢はなかなかの勇猛果敢さで(時には私の隠密を台無しにしつつ)

その先へと向かった。

 

「この場所を見て!ここに違いありませんわ」

セラーナが叫ぶ。

そこは、おそらくは塔の最上階、見るからに怪しい儀式の行われた場所だった。

 

「母が死霊術についてのめり込んでいたことは存じておりましたわ。だって

私のそれは母から教わったものですから。」

そういうと、セラーナは部屋の中を歩き回り、懐かしそうにその品々

(私の目からすればとても不気味な死霊術の媒体の数々なのだが)を

見ていた。

 

「母の研究はとても緻密なものでしたの、どこかにその詳細が記された

ノートがあるはずですわ!」

不意にセラーナが思いついて語りかけてきた。

 

私は、思い当たるノートをすでにくすね、、いや、見つけて持っておいたので、

そのままセラーナに見せた。

 

「これですわ!」

セラーナは歓喜の声をあげる。

と同時に「ソウル・ケルン」と静かに呟いた。

 

どうやらセラーナの母ヴァレリカは死霊術を通じ、

ソウル・ケルンと呼ばれる場所の研究をしていたようだ。

 

一般に符呪された武器を使うと、その魔法が同時に発動する。

それはとても強い力を持つが、その力が使われると、その対価として

魂石と呼ばれる、いわゆるエネルギーが減っていく。

 

普段使用するぶんには特に気にしないこの行為だが、

どうやらヴァレリカは、この魂石の中から減った分のエネルギー(魂)は

ソウル・ケルンと呼ばれる高異次元世界へと送られる。

そう信じて研究をしていたらしい。

 

そしてその研究の結論としてヴァレリカは自身がソウル・ケルンに行き、

魂を吸収している強力な存在と接触を図ろうとしていたらしい。

 

幸いソウル・ケルンに行くための手順も、そして触媒となる材料も、

全てがその部屋にストックされていた。

 

「準備ができたらお知らせになって」

セラーナが落ち着いた様子で私に話しかける。

 

ソウル・ケルン、今のスカイリムとは全く違う次元の世界。

魂の行き先。

 

そんなことを考えていると、

「あとは私次第ということですのね。」

セラーナはそっと、ソウル・ケルンへ通じるゲートを開くための

儀式皿に手をかざす。

 

!?

 

地響き?いやここは塔の上だから、塔自体が振動しているのか?

そんなことを考えている最中、目の前に大きな、5メートルはあろうかという

怪しく光り、そして地獄の果てまで続いているのでなないかとも

思える穴が姿を現した。

 

「ああ、ついにやりましたのね!」

セラーナが叫ぶ!

 

どうやらソウル・ケルンへの入り口を本当に開いてしまったらしい。

 

だが、いざソウル・ケルンへ行こうと足を進めると、

その入り口で私に大きな衝撃がふりかかった。

 

「なんということですの。いえ、実際想定することもできた事態ですが」

セラーナは驚いた様子私に話す。

 

「ソウル・ケルンはゲートの通行料としてあなたの魂を欲しがっている

みたいですの、ここを通るには、魂を持たない吸血鬼となるか、

それとも、あなた自身の魂のその一部だけを魂縛の魔法で取り出し、

それを渡すか、どちらかを選択する必要があるみたいです」

 

どうやらここにきて、大きな選択を迫られているようだ。

 

過去吸血症に悩まされた私は吸血鬼になるのはもちろんためらったが、

魂を一部差し出す事の不安感は当然ある。

 

しかもソウル・ケルンなどという異次元の世界、

どんな敵が待ち構えているかもわからないところに進むのだ。

弱体化して、結果命を落とすことになるのは、まさに

願い下げだ。

 

私は、苦渋の決断だが、それでも一度なんとか解消した経験のある

吸血鬼となる方法をとることにした。

 

「なるべく痛くしない方法をとりますはね。そのまま動かないで。」

そういうと、セラーナは私の首に冷たい刃、もとい八重歯を突き立てた。

 

これで、また、吸血鬼、、、、か。

広告を非表示にする